GPUの王者エヌビディアと、長年CPUで世界を支配してきたインテル。AI時代に入り、この2社の戦略は急速に交差し始めています。どちらが次世代半導体の主導権を握るのか。本記事では両社の技術、業績、そして投資家視点から見た成長性を比較し、私の見解も交えて分かりやすく解説します。
用語の意味と基本解説
エヌビディア(NVIDIA)は1993年に設立された米カリフォルニア州の企業で、GPU(画像処理装置)を中心にAI向け半導体やデータセンター製品を展開しています。最新の「Blackwell」世代GPUはAIモデルの学習効率を飛躍的に高め、世界中のクラウド事業者に採用されています。
一方、インテル(Intel)は1968年創業。半導体製造とCPU分野で長らく世界をリードしてきました。近年は「Xeon 6」シリーズやAIチップ「Gaudi 3」を軸に、AI時代への再挑戦を進めています。さらに自社製造技術「Intel 18A」を武器に、国内外の供給体制を強化中です。
つまり、GPU中心のNVIDIAと、CPU+製造に強みを持つIntel――AI時代の覇権争いは、「演算力」だけでなく「製造力」でもせめぎ合いを見せています。
出典:NVIDIA公式 | 出典:Intel Newsroom
エヌビディアとインテルの技術・製品ポジション
2025年現在、NVIDIAの中核は「Blackwellアーキテクチャ」です。前世代のHopperよりも性能効率が大幅に向上し、AI大規模モデル(LLM)の学習を最大25倍高速化すると発表されています。データセンター用GPU「GB200」「GB300」、そしてAIサーバー「DGX SuperPOD」が同社の収益を支えています。
対するIntelは2024年に「Xeon 6」を投入。省電力に特化したEコア「Sierra Forest」と、高性能Pコア「Granite Rapids」で二本柱を構築しました。さらにAIアクセラレータ「Gaudi 3」を拡充し、将来的には「Falcon Shores」でGPUと統合する計画を発表しています。
製造面では、NVIDIAがTSMCの先端5nm・4nmプロセスを利用しているのに対し、Intelは自社18Aプロセス(2nm相当)での量産を2025年後半に開始予定です。私は、この「内製化」がIntelの長期的な強みになると見ています。
出典:NVIDIA GTC 2024 Blackwell発表 | 出典:Intel Xeon 6リリース
提携・協力・競争の関係史
これまでNVIDIAとIntelは競合関係にありました。しかし2025年9月、NVIDIAがIntelに50億ドルを出資し、両社が「高帯域接続を備えた共同設計CPU」で協業すると報じられました。これは、AIデータセンターの巨大需要に対応するための「共存戦略」とも言えます。
一方でクラウド分野では、MicrosoftやMeta、OpenAIなどがNVIDIA GPUを大量採用しており、IntelのGaudiシリーズは「第2の選択肢」として拡大中です。私はこの流れを、「独占から分散」への自然なシフトだと考えます。
出典:Reuters 2025年9月19日 | 出典:Tom’s Hardware
株価・業績の比較(投資家視点)
指標 | NVIDIA | Intel |
---|---|---|
最新決算(2025年) | 売上 467億ドル(+56%) | 売上 約129億ドル(横ばい) |
主力事業 | データセンター41.1B$(全体の88%) | CPU・Foundry事業中心 |
時価総額 | 約4.5兆ドル | 約0.25兆ドル |
PER | 高水準(約50倍) | 低水準(約13倍) |
NVIDIAの高成長に比べ、Intelの業績はまだ回復途中です。ただし、製造技術(18A)とAIアクセラレータ路線が成功すれば、再評価の可能性があります。投資家目線では、NVIDIAは「成長株」、Intelは「再生株」と位置付けられるでしょう。
強みと弱みの比較(SWOT分析)
項目 | NVIDIA | Intel |
---|---|---|
強み | CUDAエコシステム・AIデータセンター支配・高利益率 | x86顧客基盤・製造力・米国内供給体制 |
弱み | 中国規制リスク・供給ボトルネック | AI GPU分野での遅れ・収益性の低下 |
機会 | 生成AI拡大・自動運転・ロボティクス | Foundry受託拡大・AIサーバー市場開拓 |
脅威 | 顧客の自社チップ化(Google/Metaなど) | AMD/NVIDIAとの激しい競争 |
私は、NVIDIAが短期的には優位を保つと見ていますが、Intelが製造でリーダーシップを取り戻す可能性もあり、5年後には勢力図が変わるかもしれません。
今後の見通しと投資家が注目すべきポイント
AI需要は今後5年間で3〜4兆ドル規模になると、ジェンスン・フアンCEOは発言しています。NVIDIAは「Blackwell」以降も毎年新アーキテクチャを投入し、AI計算需要を独占的に吸収する構えです。
IntelもAI専用半導体「Gaudi 3」と製造請負(Foundry)事業の拡張で対抗。米国内の1000億ドル超の投資は、供給多様化という国策的価値も持ちます。
投資家としては、NVIDIAの「高成長を買う」か、Intelの「復活を待つ」かが分かれ目です。私は現時点でNVIDIAを主軸としつつ、Intelを「リスク分散の長期枠」として注視しています。
まとめ
両社は異なる強みを持ちながら、AIという共通の戦場で再び出会いました。NVIDIAは“スピードとエコシステム”で圧倒し、Intelは“製造と堅実性”で再起を狙います。
AI時代の勝者は、単なるチップ性能ではなく、供給網と戦略全体を制する企業です。私は今後5年、NVIDIAが主導権を維持すると考えますが、Intelの18Aが本格稼働する2026年以降は、再び均衡する可能性があるでしょう。
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FAQ
なぜNVIDIAはAI市場で圧倒的なのですか?
CUDAという独自のソフトウェア基盤を20年以上育てており、開発者が離れにくい構造があるためです。これが最大の参入障壁になっています。
IntelはAI時代に生き残れる?
はい。製造技術の内製化とGaudiシリーズの強化により、国策的に重要な存在となっています。長期的には安定株として注目されます。
両社の株を持つのはあり?
ありです。NVIDIAで成長を狙い、Intelで安定を確保する「ハイブリッド投資」が有効だと考えます。
AIバブルは続くの?
AI需要はまだ初期段階です。短期的な調整はあり得ますが、長期では実需拡大が続くでしょう。