AIバブルと言われる中、エヌビディア(NVIDIA)の株価は急上昇を続けています。
一部の投資家からは「さすがに高すぎるのでは?」との声も。
本記事では、PER(株価収益率)・PSR(株価売上倍率)を中心に、NVIDIA株の妥当性を中立的に分析します。
用語の意味と基本解説
まず、株価バリュエーションを語るうえで欠かせないのが、PER(株価収益率)とPSR(株価売上倍率)です。
PERは「株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)」で算出され、利益に対して株価がどれだけ高いかを示す指標です。
一方、PSRは「株価 ÷ 1株あたり売上高」または「時価総額 ÷ 売上高」で求められ、企業の売上規模に対する評価を示します。
さらに、PEG(株価収益成長率倍率)も有効な補助指標で、「PER ÷ 利益成長率」により、成長期待が株価にどの程度織り込まれているかを測定できます。
技術と事業の背景
NVIDIAは1993年に設立され、GPUメーカーとして出発しました。
2000年代後半からAI向け演算処理に注力し、CUDAプラットフォームの登場によってデータセンター市場へ進出。
2025年度の売上は1,305億ドル(前年比+114%)と、かつてない成長を記録しています。
AIブームの中心に立つ企業として、世界中のクラウド・生成AI企業がNVIDIA製GPUを採用しています。
出典:NVIDIA公式 Data Center
直近の業績とバリュエーション推移
以下の表は、NVIDIAのバリュエーション推移と他社比較をまとめたものです。
PSRやPERの高さが、いかに市場の成長期待を映しているかがわかります。
| 年度 | 売上高(億ドル) | PER | PSR | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2019年 | 117 | 28.9倍 | 9.2倍 | AI需要前夜 |
| 2021年 | 166 | 43.5倍 | 14.1倍 | GPUブーム期 |
| 2023年 | 269 | 57.8倍 | 19.6倍 | 生成AI台頭 |
| 2025年 | 1,305 | 46.9倍 | 28.1倍 | AI投資加速期 |
この表からは、売上の成長スピードに対してPERがやや鈍化し、PSRが急上昇していることがわかります。
つまり、投資家は利益よりも「売上の伸び」そのものに期待している段階です。
競合他社との比較
次に、主要半導体企業との比較を見てみましょう。
| 企業名 | PER | PSR | 特徴 |
|---|---|---|---|
| NVIDIA | 46.9倍 | 28.1倍 | AIインフラの主役 |
| AMD | 34.7倍 | 11.3倍 | AI・GPUで競合 |
| Intel | 17.5倍 | 3.6倍 | CPU中心、再建期 |
| Micron | 22.8倍 | 4.1倍 | メモリ大手、AI向け急伸 |
この比較から、NVIDIAの評価が突出していることがわかります。
一方で、マイクロンテクノロジーのようにAIメモリ分野で追い上げる企業も登場しており、今後は競争激化が予想されます。
関連分析:NVIDIAとマイクロンの比較|AI事業の違い
投資家目線の評価と筆者の考察
PER・PSRの数値だけを見ると、確かに「高すぎる」と感じるかもしれません。
しかし、NVIDIAのAI・データセンター事業は、他社が簡単に模倣できない技術的な参入障壁を持っています。
私は投資家の立場から、次の3点で妥当性を評価します。
- ① 高いPSRは、AI需要拡大を先取りしている可能性
- ② 利益率が依然として50%超と驚異的
- ③ 市場シェアの独占力はまだ強固
ただし、成長が一服すれば株価の調整もあり得ます。
NVIDIA株価分析2025|今後の見通しと投資判断 でも解説した通り、成長期待が裏切られた場合の反動は大きく、投資タイミングの見極めが重要です。
今後の見通しと注目ポイント
NVIDIAはAI革命の中心に位置しており、今後もBlackwell世代GPUや次世代Rubinシリーズなど、ハイエンド製品の投入が続きます。
ただし、中国向け輸出規制や競合企業の動きなど、外部リスクも無視できません。
特に2026年度の第2四半期決算では、売上成長の「持続性」が最大の焦点となります。
関連:NVIDIAの決算書を読む|2026年度第2四半期の全貌
まとめ|NVIDIA株は高いが「成長で正当化」も
結論として、NVIDIA株は確かに割高です。
しかし、それはAI時代の覇者として市場が「未来を先取り」している結果でもあります。
筆者としては、短期では調整リスクに警戒しつつも、長期ではAIインフラの拡張に伴い再評価の余地があると考えます。
投資判断の際は、株価指標だけでなく技術・需給・競争環境を総合的に見極めることが重要です。
よくある質問(FAQ)
NVIDIAのPERはなぜ高いのですか?
AI関連の成長期待が大きく、市場が将来利益を織り込んでいるためです。短期的には割高でも、利益成長が続けば適正化します。
PSRが高いのは危険ですか?
PSRが高いということは、売上に対して株価が過剰評価されている可能性を示します。ただし、NVIDIAのように成長が続く企業では一定の高水準は許容されます。
今からNVIDIA株を買っても遅くないですか?
短期的には調整リスクがありますが、長期的にはAI・データセンター分野の成長が続く限り、投資機会は残っています。