AIブームの中核にいるNVIDIAと、企業インフラを支えるDell Technologies。
どちらもAI時代の主役ですが、立ち位置はまったく異なります。
本記事では両社のAIソリューションを比較し、企業向けAI市場でどちらが優位に立っているのかを投資家目線でわかりやすく解説します。
AI時代の主役2社|NVIDIAとDellの基本構図
NVIDIAはGPUやネットワーク機器、そしてAIソフトウェアまでを一体化した「AIプラットフォーム企業」です。
2026年度第2四半期(2025年8月発表)には売上466億ドル、そのうちデータセンター部門が411億ドルと全体の9割近くを占めました。
AI半導体の圧倒的なシェアを背景に、同社は“AIインフラの心臓部”として世界の生成AI開発を支えています。
出典:NVIDIA Investor Relations
一方のDell Technologiesは、サーバー・ストレージ・サービスを統合した「企業ITの総合プロバイダー」です。
2026年度第2四半期の決算ではAIサーバー関連の売上が前年比+69%増となり、通期ガイダンスを200億ドルへ上方修正。
NVIDIAのGPUを搭載したAIサーバー「PowerEdge XE9680」などを中心に、“AIファクトリー”構想を現場で具現化しています。
出典:Dell Technologies Investor Relations
NVIDIAとDellの技術・製品ポジションを比較
NVIDIAの強みは、半導体からソフトウェアまでを一貫して最適化できる点です。
最新の「Blackwell(B200/B100)」GPUは前世代Hopper比で最大25倍の性能効率を達成し、液冷ラック型サーバー「GB200 NVL72」に搭載されています。
これらはAI学習の基盤としてクラウド事業者や研究機関に急速に導入されています。
一方、DellはこれらのGPUを使いやすくする“入れ物”を提供します。
PowerEdgeシリーズの中でも「XE9680」や「XE9680L」は、H100/H200など最新GPUを最大8基搭載可能で、PCIe Gen5や液冷にも対応。
企業が自社内で生成AIを運用する際に必要な設計・保守・冷却のノウハウを提供し、NVIDIAの技術を実際の現場に届ける役割を果たしています。
つまり、NVIDIAが「頭脳」を作り、Dellが「体」を作る——両社は補完関係にあるのです。
協業と競争の関係史|“AIファクトリー”構想の進化
両社の関係は長く、GPUサーバー時代から続く協業の延長線上にあります。
2024年3月、DellはNVIDIAと共同で「AI Factory with NVIDIA」を発表し、生成AIを企業が導入しやすくする設計指針「Validated Design」を公開。
同年5月には構成を拡張し、最新GPU・ネットワーク・ストレージを統合した新モデルをリリースしました。
出典:Dell AI Factory with NVIDIA
ジェンスン・フアンCEOは「AIファクトリーは“知能”を工業的に生産する装置だ」と語り、AIを電力・水道と並ぶインフラに例えました。
マイケル・デルCEOも「企業がAIを安全に導入するための最短ルートを提供する」と述べ、両社の方向性が一致していることを強調しています。
株価・業績の比較|投資家視点で見る両社の実力
| 指標 | NVIDIA(FY2026 Q2) | Dell Technologies(FY2026 Q2) |
|---|---|---|
| 売上高 | 466.7億ドル | 推定220億ドル(AI関連含む) |
| 主力部門 | データセンター(411億ドル) | ISG(サーバー・ネットワーク) |
| 営業利益率 | 約64% | 約8% |
| AIサーバー見通し | GPU出荷継続増 | 通期200億ドルガイダンス |
| 時価総額(2025年10月時点) | 約3兆ドル | 約1,000億ドル |
この表からわかること: NVIDIAは圧倒的な利益率と時価総額を持つ一方で、DellはAIサーバー需要を取り込み「売上規模」で追随している構図が見て取れます。
強みと弱みの比較|NVIDIAは「中核」、Dellは「実装」
NVIDIAの強みはCUDAを中心としたソフトウェア・エコシステムにあります。
ハードウェア性能だけでなく、開発者が使いやすいツールやSDK群が競合との差を広げています。
しかし一方で、供給制約や電力・冷却コスト、そして各社の自社チップ開発がリスク要因です。
Dellの強みは調達・製造・サポート網の広さです。
企業が求めるセキュリティやサステナビリティ要件に対応し、AI導入を安全に実現できる点が評価されています。
ただし、GPU供給に依存するため、NVIDIAの出荷動向に業績が左右されやすいという課題があります。
今後の見通しと投資家が注目すべきポイント
AI需要の爆発が続く中、NVIDIAとDellの関係はさらに密接になっています。
NVIDIAは「AIプラットフォーム」を世界に供給し、Dellはそれを企業現場で動かすインフラとして展開。
どちらか一方が欠けてもAIエコシステムは成立しません。
私は、NVIDIAが引き続き技術革新の中心に立つ一方で、Dellが企業導入の“最後の一マイル”を担うと考えます。
AIインフラ市場はまだ序章に過ぎず、両社は“競合ではなく共生”という形で共に成長していくでしょう。
まとめ|AIインフラの二大軸をどう見るか
NVIDIAは「AIの頭脳」を、Dellは「AIの身体」を担う存在です。
両社は異なる強みを持ちつつ、AIインフラという共通市場で共鳴しています。
投資家にとっては、半導体の供給側とシステム導入側という異なるアプローチからAIブームの恩恵を捉えるチャンスです。
私は、NVIDIAを中長期成長株、Dellを安定収益型のAI関連銘柄として注目しています。
内部リンク:
NVIDIAのAI工場構想とは?次世代半導体産業の中核を解説
NVIDIAの決算書を読む|2026年度第2四半期の全貌とAI事業分析
NVIDIAのAI戦略を徹底解説|技術と株価への影響
NVIDIA株価分析2025|今後の見通しと投資判断
FAQ
NVIDIAとDellはライバル企業ですか?
NVIDIAとDellは直接のライバルではなく、補完関係にあります。NVIDIAがAI半導体を供給し、Dellがそれを企業システムとして組み上げる立場です。
なぜDellはNVIDIA製GPUを採用しているのですか?
AI学習や生成AIの性能を最大化するにはNVIDIAのCUDAエコシステムが欠かせないためです。Dellはそれを利用して、企業がすぐ使えるAI環境を構築しています。
投資するならどちらの株が有望ですか?
NVIDIAは高成長・高リスク型、Dellは安定収益型の傾向があります。分散投資の観点から両社を組み合わせる戦略も有効です。
今後の注目ポイントは何ですか?
Blackwell世代GPUの普及と、DellのAIファクトリー拡張が焦点です。AIインフラ市場の成長が両社の株価を左右するでしょう。