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「なぜNVIDIAはTSMCに製造を任せるのか?」と疑問に感じる投資家は多いはずです。
一言でまとめると、最先端プロセス・先進パッケージ・供給規模の3点でTSMCが最適なパートナーだからです。
そして両社は、設計から量産までをまたぐ長期の協業関係で結びついています。
本記事では、NVIDIAがTSMCを中核ファウンドリに選ぶ4つの理由を、技術とビジネスの両面から解説します。
あわせて、SamsungやIntelなどの競合との比較、サプライチェーンリスク、投資家がチェックすべきポイントも整理します。
AI半導体やNVIDIA株に関心があるものの、「製造は難しそう」と感じている方でも読み切れるように、まずは用語から順番に整理していきます。
ファブレスとファウンドリとは?|NVIDIAとTSMCの基本関係
最初に、NVIDIAとTSMCの関係を理解するための前提を押さえます。
キーワードはファブレスとファウンドリです。
NVIDIAはファブレス企業です。
自社で半導体工場(ファブ)を持たず、GPUやCPUなどの設計に特化しています。
一方、製造を担当するのがファウンドリと呼ばれる専業メーカーで、その代表格がTSMCです。
NVIDIAはハイエンドGPUの大部分をTSMCに委託しつつ、一部の製品ではSamsungも活用してきました。
ただし、AIデータセンター向けの最先端GPUでは、現在TSMCがほぼ独占的なポジションを占めています。
先端ノードと先進パッケージがカギ
ファウンドリを選ぶうえで、NVIDIAにとって最も重要なのが先端ノードと先進パッケージです。
先端ノードとは、一般に「3nm」「5nm」のように呼ばれる微細加工プロセスのことです。
プロセスが細かいほど、高性能・低消費電力のチップを作りやすくなります。
AIサーバー向けGPUでは、この先端ノードの性能差が、データセンターの電力効率や演算性能に直結します。
さらに近年は、チップを大容量メモリや複数ダイと組み合わせる「先進パッケージ」が不可欠になりました。
NVIDIAのAI GPUでは、HBM(高帯域メモリ)とGPUダイを一体化するCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)が中核技術です。
つまり、NVIDIAにとって理想のファウンドリとは、先端ノードとCoWoSの両方で量産実績を持ち、大規模供給ができる企業でなければなりません。
現時点でこの条件をフルに満たしているのがTSMCです。
AIブームで変わったサプライチェーンの重心
AIブーム以前のGPU市場では、ゲーミング向け製品が中心で、プロセスやパッケージ技術よりも価格や歩留まりのバランスが重視されていました。
そのため、NVIDIAは一部の世代でSamsung製プロセスも積極的に採用していました。
しかし、現在はデータセンター向けAI GPUが売上と利益の柱になっています。
AIサーバーでは電力効率と計算密度が最重要となるため、最先端ノード+先進パッケージ+安定供給という3つの条件を高いレベルで満たす必要があります。
この条件を満たすプレイヤーは世界でも限られており、現時点ではTSMCが圧倒的に優位です。
その結果、NVIDIAのサプライチェーン重心もTSMCに寄っていった、という流れになります。
AmpereからBlackwellへ|NVIDIAとTSMCの関係史
続いて、GPUアーキテクチャの世代ごとに、NVIDIAがどのファウンドリを選んできたかを振り返ります。
歴史の流れを追うと、なぜ最終的にTSMC中心へ収れんしたのかが見えてきます。
Ampere世代:データセンターはTSMC、ゲーミングはSamsung
2020年に登場したAmpere世代では、用途によってファウンドリを使い分けていました。
データセンター向けのA100はTSMC N7で製造され、AIトレーニング用GPUとして大きな成功を収めました。
一方、同じAmpere世代でもゲーミング向けのGeForce RTX 30シリーズは、Samsung 8Nプロセスを採用しています。
これは当時のTSMCがデータセンター向けや他社向け受注でフル稼働だったことも背景にあり、調達リスクを分散するための選択といえます。
このようにAmpere世代では、性能重視のデータセンター製品はTSMC、容量とコストを優先するゲーミング製品はSamsungという住み分けが行われていました。
Hopper世代:H100からTSMC 4Nへの本格回帰
2022年に発表されたH100(Hopper)では、NVIDIAは再びTSMCプロセスへ全面的に回帰しました。
採用されたのはTSMC 4Nと呼ばれるカスタムプロセスです。
H100は、AIトレーニングや推論で業界標準となり、クラウド大手やAIスタートアップの主要GPUとして採用されました。
これは、TSMC 4Nが高い性能と電力効率、そして量産の安定性を同時に実現したことを意味します。
この頃から、NVIDIAの成長ドライバーは明確にデータセンター事業へとシフトしました。
結果として、最も重要な製品ほどTSMC依存が高まる構造が固まっていきます。
Blackwell世代:TSMC 4N/4NPと先進パッケージのフル活用
2024年に発表されたBlackwell世代では、この傾向がさらに強まりました。
AIデータセンター向けのBlackwell GPUは、公式資料でもTSMC 4N/4NP世代のプロセスとCoWoSによる先進パッケージを前提としています。
NVIDIAはBlackwell世代で、GPUダイ・HBM・インターポーザを一体最適化する設計を進めています。
これは、単に「チップを作ってもらう」というレベルではなく、製造プロセスそのものを前提にアーキテクチャを組み立てていることを意味します。
この段階まで来ると、NVIDIAとTSMCは設計と製造をまたいだ共同開発パートナーに近い関係です。
単純な顧客・受託の関係ではなく、お互いの設備投資・ロードマップを前提にビジネスを組み立てていると言ってよいでしょう。
CoWoSとcuLitho|NVIDIAとTSMCの協業が深まる2つの理由
ここまでの歴史で、NVIDIAとTSMCがAIデータセンターGPUを軸に強く結びついてきた流れを整理しました。
次に、現在進行形で協業が深まっている2つの領域、CoWoSとcuLithoに注目します。
CoWoS:AI GPUのボトルネックだった「先進パッケージ」
AIサーバー向けGPUでは、演算性能だけでなくメモリ帯域がボトルネックになりやすくなりました。
そこで採用が進んでいるのが、HBMをGPUダイのすぐそばに積層するCoWoSパッケージです。
CoWoSは高性能ですが、工程が非常に複雑で、生産能力の拡張が難しいという課題があります。
実際、AIブーム初期のNVIDIA GPUでは、CoWoSキャパシティ不足が供給制約の主な原因とされてきました。
TSMCはこのボトルネック解消に向けて、数年かけてCoWoSの月産能力を段階的に増強しています。
NVIDIA側も、製品ロードマップと連動させながら、キャパの確保や長期契約・前払いなどで協力していると考えられます。
このように、CoWoSは単なるパッケージ技術ではなく、NVIDIAとTSMCの協業の深さを象徴するインフラになっています。
cuLitho:設計ソフトと露光プロセスの一体最適化
もう一つ重要なのが、NVIDIAが開発したcuLithoという露光計算向けソフトウェア基盤です。
これは、半導体製造で必要となる膨大な露光計算をGPUで高速化するためのライブラリ群で、TSMCやEDAベンダーと連携して導入が進んでいます。
露光計算は先端ノードになるほど負荷が増え、計算時間や電力が大きなボトルネックになっていました。
cuLithoを活用すると、これを大幅に短縮できるとされ、工場全体のスループット向上につながります。
ポイントは、NVIDIAが「自社GPUを作るためのチップ」だけでなく、「半導体業界全体の生産性を高めるソフト基盤」まで提供している点です。
TSMCから見ても、NVIDIAとの協業はチップ製造だけでなく、工場運営の効率化・コスト削減にも寄与する戦略的パートナーシップになっています。
ここまでの整理|「TSMC一択」に見える理由
ここまでを一度まとめます。
- NVIDIAはファブレス企業で、GPU設計に専念している
- 最先端GPUでは、先端ノード+先進パッケージ+供給規模が同時に必要
- Ampere世代ではTSMCとSamsungを併用したが、データセンター製品は一貫してTSMCが担当
- Hopper・Blackwell世代では、TSMC 4N/4NPプロセスとCoWoSが前提になっている
- CoWoS能力増強やcuLitho導入など、製造プロセスレベルでの協業が進んでいる
これらを総合すると、現時点でNVIDIAにとってTSMCは「ほぼ唯一の選択肢」に近い存在になっていることが分かります。
ただし、だからといって「永遠にTSMC一択」と決まっているわけではありません。
次のパートでは、SamsungやIntelなど他ファウンドリとの関係、サプライチェーンリスク、そして投資家がチェックすべきポイントを深掘りしつつ、NVIDIAとTSMCの関係を株価・投資視点から整理していきます。
SamsungとIntelとの比較|なぜTSMC優位が続くのか
NVIDIAとTSMCの関係を理解するうえで欠かせないのが、他ファウンドリの実力との比較です。
特にSamsungとIntelは「TSMCの代替」として常に注目されます。
しかし、それぞれに明確な課題があり、現時点でTSMCと同じレベルでAI GPUを量産できる状況ではありません。
Samsung:先端ノードの競争力はあるが、パッケージと歩留まりが課題
Samsungは世界2位のファウンドリであり、3nm GAA(Gate-All-Around)など野心的な技術を推進しています。
しかし、AIサーバー向けGPUに必要な条件を考えると、次の2点が大きな壁になります。
- 歩留まりの不安定さ:安定した量産が難しい世代が多く、NVIDIAのフラッグシップ級製品には不向き
- 先進パッケージ(HBM+CoWoS級)の量産能力が限定的
SamsungはHBM3の量産で存在感を高めていますが、NVIDIAのAI GPUに求められる「GPUダイ+HBM+パッケージ一体設計」の領域では、TSMCに遅れをとっています。
Intel:製造力は大きいが、AI GPU向けの実績はまだ限られる
IntelはIDM(設計+製造の一体企業)として巨大な製造能力を持っています。
しかし、NVIDIAにとってのファウンドリ候補として見ると、現時点では「拡張途上」という評価になります。
実際にIntelのAIアクセラレータGaudi 3もTSMC 5nmで製造されています。
つまり、Intel自身が「最先端製造を外部委託」している状況であり、NVIDIAのAI GPUを受託できる段階には至っていません。
将来的にIntel Foundry Services(IFS)が成熟すれば、NVIDIAが一部を委託する可能性はあります。
ただし、現時点での性能・歩留まり・パッケージ力は、TSMCに一歩以上の差があります。
サプライチェーンのリスクと、TSMCの能力拡張計画
NVIDIAがTSMCに大きく依存する以上、投資家としては「依存リスク」を冷静に評価する必要があります。
ただし、同時にTSMC側も、急拡大するAI需要に対応するため能力増強を進めています。
リスク1:地政学的リスク(台湾)
TSMCは台湾を中心に製造拠点を置いているため、台湾海峡の緊張は一定のリスクになります。
これはNVIDIAだけでなく、Apple・AMD・Qualcommなどの大手企業も同じ状況です。
ただしTSMCは、長期的なリスク低減のためにアメリカ(アリゾナ)・日本(熊本)・ドイツなどで生産拠点を拡張しています。
特に日本向けの工場は、将来的に先進パッケージを含む役割を担える可能性があり、この動きはNVIDIAのサプライチェーン安定化にも寄与します。
リスク2:先進パッケージ(CoWoS)の能力不足
AIブーム初期、最も深刻だったのがCoWoSのキャパシティ不足でした。
Blackwell世代に入っても、CoWoSは依然として供給全体の制約要因です。
しかしTSMCは、2025年以降に月産7.5万枚規模まで拡張する計画が報じられており、これが実現すれば供給制約は徐々に緩和されていきます。
NVIDIA側も、前払い契約や長期発注でキャパシティを確保しているとされ、今後は供給量の安定化が進むと見られます。
投資家が見るべき「TSMC依存」と株価の関係
ここまで技術の話を整理しましたが、実際に投資判断を行ううえでは、NVIDIA株価とTSMC依存の関係を押さえる必要があります。
ポイントは3つです。
- ① 供給制約が株価変動の要因になる
- ② Blackwell世代はTSMC能力と連動して出荷量が増える
- ③ 競合(AMD・Intel)の製品もTSMC製が多く、TSMC全体がAI供給の基盤
特に①は重要で、AI GPUの供給遅延が起きると、クラウド企業やAIスタートアップへの出荷がストップし、売上成長に直結するため株価の下押し要因になります。
逆にTSMCのCoWoS能力が順調に拡大すれば、Blackwell世代の出荷量が伸び、データセンター事業の売上が上振れする可能性があります。
なお、関連分析では以下の記事も参考になります。
・AIサーバー市場でのNVIDIA支配力を整理 →
AIサーバー市場のNVIDIA支配力|2020〜2025徹底分析
・NVIDIA株価の成長と需給関係を理解するなら →
NVIDIA株価の今後|短期・中期・長期シナリオ
NVIDIAやTSMC関連株に投資するなら、まず証券口座の準備を
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エヌビディア株価とChatGPTブーム|AI需要でどこまで伸びる?
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よくある質問(FAQ)
Q1. なぜNVIDIAはTSMCに製造を任せ続けているのですか?
結論として、TSMCが①先端ノード性能、②先進パッケージ技術(CoWoS)、③量産規模の3点すべてで最も優れているためです。
特にAIデータセンター向けGPUでは、TSMCの4N/4NPプロセスとCoWoSパッケージが前提となっており、SamsungやIntelではNVIDIAの要求水準を満たしにくい状況です。
そのため、NVIDIAは最重要製品のほとんどをTSMCへ一任しています。
Q2. SamsungやIntelがNVIDIAの代わりになれる可能性はありますか?
現時点では限定的です。
Samsungは先端ノードで競争力があり、HBMでも存在感を高めていますが、歩留まりと先進パッケージ量産の面でTSMCとの差があります。
IntelはIFSの拡大中ですが、Gaudi 3 ですらTSMC製であり、NVIDIAの最先端GPUを受託するレベルには達していません。
ただし、中長期的にはSamsungやIntelが受託比率を増やす可能性はあります。
Q3. TSMC依存はNVIDIA株にとってリスクですか?
地政学やCoWoSキャパ不足など、一定のリスクは存在します。
しかしTSMCはアリゾナ・熊本・ドイツなど海外拠点を拡大し、NVIDIAも長期契約や前払いで供給安定化を進めています。
投資家としては、「TSMCの供給能力=NVIDIAの出荷量」という関係を理解したうえで、TSMCの設備投資計画やCoWoS能力の動向をチェックすることが重要です。
まとめ|NVIDIAとTSMCは“AI時代の中核ペア”
AIデータセンターが急拡大するなか、NVIDIAとTSMCの関係は単なる委託・受託の枠を超え、設計と製造が一体化した戦略パートナーになっています。
– Blackwell世代はTSMC 4N/4NPが前提
– CoWoSはAI GPUの生命線
– cuLitho導入でTSMCの製造効率も向上
こうした構造は、NVIDIAの競争優位にも、TSMCの成長にも直結しています。
AIサーバー市場が拡大する限り、両者は今後も“AI時代の中核ペア”として成長していくでしょう。
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