エヌビディア(NVIDIA)と台湾積体電路製造(TSMC)の関係は、AI時代を読み解く上で欠かせません。NVIDIAはGPU設計に特化したファブレス企業であり、TSMCはその製造を担う世界最大のファウンドリです。設計と製造の分業は半導体業界の常識ですが、両社の関係は投資家にとって「依存リスク」と「成長の裏付け」の両面を持ちます。本記事では、両社の特徴、提携の実態、業績や株価への影響を比較し、初心者にもわかりやすく整理します。
用語の意味と基本解説
NVIDIAは1993年に設立された米国企業で、GPUを中心にAI・データセンター分野で成長してきました。2025年度第2四半期の売上は466億ドルに達し、その88%をデータセンター事業が占めます。対するTSMCは1987年に台湾で創業し、AppleやAMDを含む世界中の企業に製造サービスを提供。2025年第2四半期の売上は300億ドル、粗利率は58.6%と高水準です。
投資家の視点では、NVIDIAは「設計・ソフト・プラットフォーム」で高い収益性を維持し、TSMCは「極先端製造とパッケージング」で安定成長を実現しています。
出典:NVIDIA決算 FY2026 Q2
出典:TSMC決算 Q2 2025
エヌビディアとTSMCの技術・製品ポジション
NVIDIAの最新GPU「Blackwell(GB200/B200)」は、TSMCの5nmや4nmプロセスで製造されています。さらにHBMメモリとGPUをつなぐ先端パッケージ「CoWoS」技術もTSMCの独自領域です。これによりAIサーバに必要な膨大な帯域幅を確保できます。
NVIDIAはCUDAなどのソフト基盤で差別化し、TSMCは2ナノ世代(N2)の開発で製造優位を維持。両社は設計と製造で役割を分けながら、互いの成長を加速させています。
出典:NVIDIA Blackwell発表
出典:TSMC CoWoS公式
提携・協力・競争の関係史
NVIDIAは自社工場を持たず、製造はTSMCに依存してきました。ジェンスン・フアンCEOは2025年1月に「TSMCの先端パッケージ需要は依然として強い」と発言し、依存関係の継続を示唆しました。一方で、米国内での生産構想も同年4月に表明し、サプライチェーン多角化を模索しています。
TSMCもAI需要に応えるためにCoWoSの能力を増強中です。両社は競合関係ではなく、垂直分業を通じて半導体市場を拡大する補完関係を築いています。
株価・業績の比較(投資家視点)
2025年10月3日時点の株価は、NVIDIAが188.89ドル、時価総額は約4.56兆ドル。TSMCは288.11ドル、時価総額は約1.13兆ドルです。PERはNVIDIAが53倍、TSMCが30倍と、NVIDIAの評価は割高に見えますが、それはAI需要を先取りする期待値の表れです。
両社の財務を比べると、NVIDIAは売上の成長率と粗利の高さが光り、TSMCは安定性と顧客の多様性が強みとなります。
出典:Yahoo Finance NVIDIA
出典:Yahoo Finance TSMC
強みと弱みの比較
エヌビディアの強みはCUDAやNVLinkなどの独自技術とエコシステムで、高い粗利を実現することです。ただし、製造を外部委託するリスクがあり、米中規制や地政学要因で売上が揺らぐ可能性があります。
TSMCの強みは製造技術の優位性と圧倒的シェアですが、AppleやNVIDIAなど特定顧客への依存が弱点です。また、台湾を本拠とするため、地政学リスクを常に抱えています。
今後の見通しと投資家が注目すべきポイント
今後はNVIDIAのBlackwell世代の供給が株価を動かす一方、TSMCの2nm世代やパッケージ技術がボトルネックを解消できるかが焦点です。米中規制強化や為替変動は短期的な株価ボラティリティを生みます。
投資家は「設計力のNVIDIA」と「製造力のTSMC」が相互依存していることを理解し、双方の決算や規制動向を注視することが重要です。
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FAQ
NVIDIAはなぜTSMCに製造を委託するのですか?
自社工場を持たない「ファブレス」モデルを採用しているためです。TSMCの先端ノードとパッケージ技術を利用することで、研究開発と設計に集中できるメリットがあります。
TSMCのCoWoSとは何ですか?
CoWoSは「Chip on Wafer on Substrate」の略で、GPUとメモリを高密度に接続する先端パッケージ技術です。AI処理に不可欠な帯域幅を確保できます。
米中規制は両社にどう影響しますか?
NVIDIAは対中輸出規制で製品ラインナップを調整する必要があります。TSMCも顧客構成や受注ポートフォリオに影響を受ける可能性があります。
投資初心者はどちらに注目すべきですか?
短期的な値動きを追うならNVIDIA、安定的な成長に注目するならTSMCという見方が一般的です。ただし両社は相互依存しており、合わせて追うことが推奨されます。
まとめ
NVIDIAとTSMCの関係は、AI時代の半導体市場を象徴しています。設計に強みを持つNVIDIAと、製造に強みを持つTSMCは、互いに依存しながら成長を続けています。投資家は「依存がリスクであり、同時に成長の源泉である」という点を理解することが大切です。
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