今では誰もが知る「GPU」。しかし、その始まりを知る人は意外と少ないです。
この記事では、1995年のNV1から最新のH100、Blackwell世代までの30年を振り返り、GPUがいかに世界を変えてきたのかをわかりやすく解説します。
技術の進化だけでなく、投資家視点での価値や今後の展望もあわせて紹介します。
用語の意味と基本解説
GPU(Graphics Processing Unit)とは、画像描画や並列処理を担う半導体です。
NVIDIAが1999年に発売した「GeForce 256」が“世界初のGPU”とされ、3Dグラフィックスの計算処理をCPUから切り離した点が画期的でした。
さらに2006年には「CUDA」技術を導入し、GPU上で一般計算を行うGPGPUの時代が始まります。
これにより、AI・科学計算・自動運転など、GPUの用途は一気に拡大しました。
出典:NVIDIA Developer
技術・製品としての背景と登場の経緯
NVIDIAの歴史は1995年の「NV1」から始まります。
NV1はセガサターンとの連携を意識した独自設計でしたが、市場の主流になったのは1999年の「GeForce 256」です。
以降、NVIDIAはほぼ4〜5年ごとに大きな転換点を迎えています。
下の年表では、GPU進化のマイルストーンをまとめました。
年 | 製品名/世代 | 主要トピック |
---|---|---|
1995年 | NV1 | 初の3D描画対応カード。セガと連携。 |
1999年 | GeForce 256 | 「GPU」概念を定義。T&Lエンジン搭載。 |
2006年 | CUDA登場 | 汎用計算をGPU上で実行可能に。 |
2018年 | RTX(Turing) | レイトレーシング対応。AI推論も強化。 |
2022年 | Hopper(H100) | AI・HPC専用GPUとして登場。 |
2024年 | Blackwell(B200/GB200) | 次世代AI基盤。NVLink5対応。 |
2025年 | Blackwell Ultra | Rubin世代へ進化予告(2026年予定)。 |
この年表からわかるように、NVIDIAは「ゲームからAI」へと進化の軸を移してきました。
特に2018年以降は、AI半導体企業としての顔が強くなっています。
最新の活用事例や導入状況
2025年現在、GPUの主戦場はゲーミングからデータセンターへ完全に移行しました。
特に注目されるのは、Microsoft Azureが運用を開始した「GB300クラスタ」です。
4,608基のH100 GPUを束ね、FP4推論で92 ExaFLOPSを達成。世界最大級のAIインフラとして稼働しています。
また、自動運転分野でも「Jetson」シリーズが車載AIの頭脳として普及しています。
出典:NVIDIA公式ブログ
関連記事:NVIDIAのAI工場構想とは?(AIデータセンターの次世代モデルを解説)
競合・代替技術との違い
GPU市場では、AMDやIntelが長年のライバルです。
Jon Peddie Researchによると、2025年第2四半期のデスクトップGPUシェアはNVIDIAが約94%を占めています。
AMDは約6%、Intelは統合型GPUに注力しています。
次の表は主要3社の比較です。
項目 | NVIDIA | AMD | Intel |
---|---|---|---|
代表GPU | H100 / RTX 4090 | MI300 / RX 7900 | Arc / Xe |
主力市場 | AI・データセンター | ゲーミング・HPC | ノートPC統合型 |
製造委託先 | TSMC | TSMC | 自社+TSMC |
市場シェア(2025Q2) | 94% | 6% | ― |
この表からわかる通り、NVIDIAはAI特化製品とCUDAエコシステムにより圧倒的優位を維持しています。
関連記事:エヌビディア vs AMD|GPU戦争の行方と株価比較
ビジネス的価値・投資家目線での評価
NVIDIAの収益構造を見ると、2026年度第2四半期の売上は467億ドル、そのうちデータセンター部門が411億ドルを占めました。
この比率(約88%)が示す通り、もはやNVIDIAは「AIインフラ企業」です。
粗利率は70%台を維持し、半導体業界でも異例の高収益を記録しています。
出典:NVIDIA Investor Relations
投資家視点では、H100とBlackwellの普及スピードが株価に直結しています。
関連記事:NVIDIAの決算書を読む|2026年度第2四半期の全貌とAI事業分析
私は投資家として、この構造転換を「第2のインターネット革命」と見ています。
GPUの進化は単なる技術革新ではなく、経済構造を変える力を持っています。
今後の見通し・課題・注目ポイント
今後は2026年登場予定の「Rubin」世代が焦点です。
Blackwell Ultraを超える消費電力と演算性能をどう制御するかが課題となります。
また、米国の輸出規制や電力コストの上昇もリスク要因です。
しかし、AI需要が拡大する限り、GPU市場の成長は続くと見られます。
また、長期投資視点では「半導体ファンド」や「ETF」を活用した分散投資も有効です。
関連:半導体ファンド徹底比較!NVIDIAファン必見のおすすめETF5選
私は今後、NVIDIAがAIハードとクラウドソフトを統合する「完全AI企業」へ進化すると見ています。
それはGPUの物語の次章――「AI工場の時代」の幕開けです。
まとめ
GPUは30年で「描画装置」から「世界の頭脳」へ進化しました。
NVIDIAはそのすべての転換点を主導してきました。
NV1の試行錯誤からH100・Blackwellの大成功まで、1社がテクノロジー史を動かすのは極めて稀です。
私は投資家として、この歩みを「人類の計算史の縮図」として見ています。
参考:Reuters / Bloomberg / NVIDIA公式サイト
FAQ
GPUはいつから使われ始めたのですか?
1999年にNVIDIAが発売した「GeForce 256」が世界初のGPUと定義されています。CPUから3D演算を切り離したことで、描画性能が飛躍的に向上しました。
CUDAとは何ですか?
CUDAはNVIDIAが2006年に開発した並列計算プラットフォームです。GPUをAIや科学計算に応用できるようになり、GPGPU時代の扉を開きました。
今後のGPUの進化はどの方向に向かいますか?
今後はAI処理の効率化と省電力化が鍵です。Rubin世代以降は、データセンターとAIモデルを一体化する「AIファクトリー構想」が進むと予想されます。