生成AIブームの中心にいるエヌビディアと、長年の宿敵であるAMD。両社の戦いはGPUだけでなく、AIサーバー・半導体市場・株価までも巻き込んだ“総合戦”へと進化しています。本記事では、2025年10月4日時点のデータをもとに、両社の技術・業績・株価を多角的に比較し、今後の勝者を探ります。
用語の意味と基本解説
エヌビディア(NVIDIA)は1993年設立。米カリフォルニア州に本社を置き、GPUやAI用アクセラレータを中心に成長してきました。近年はソフトウェアやネットワークまで統合した「AIプラットフォーム企業」へと進化しています。
AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)は1969年創業。CPU「Ryzen」やサーバー向け「EPYC」、そしてGPU「Radeon」「Instinct」を展開。設計は自社で行い、製造はTSMCへ委託する“ファブレス型”です。
両社の違いを一言で言えば、NVIDIAはAI中心の垂直統合モデル、AMDはCPUとGPUの両輪で戦う汎用型モデル。私はこの構造の違いが、今後の成長スピードを大きく左右すると考えます。
エヌビディアとAMDの技術・製品比較
NVIDIAは2024年3月、次世代「Blackwell」アーキテクチャを発表。主力GPU「B100」「B200」「GB200」はHBM3eメモリを搭載し、AI推論の効率を大幅に高めました。さらにNVLinkやInfiniBandを組み合わせ、サーバー全体の最適化を実現しています。
一方のAMDは「Instinct MI300」シリーズを量産し、2024年10月には改良版「MI325X」を発表。2025年後半には「MI350」系を投入予定で、AI推論性能の拡大を狙います。特にEPYC CPUとの組み合わせでコスト効率を高める戦略です。
技術面での決定的な差はソフトウェア層。NVIDIAは「CUDA」や「NIM」などAI開発者向けツール群を整備し、開発環境を囲い込みました。AMDもオープンな「ROCm」を展開していますが、現状はNVIDIAの優位が続いています。
詳しくは関連記事「CUDAとは?NVIDIAのAI戦略の核」でも解説しています。
提携・協力・競争の関係史
NVIDIAとAMDの関係は、常に競争の中にあります。しかし同時に、PCI ExpressやEthernetなどの標準規格では協調関係も維持。AI分野では、NVIDIAがクラウド企業(Microsoft、Amazon、Google)と深く提携し、システム全体で優位を築きました。
AMDも大手クラウドに採用されつつあります。特に「EPYC+Instinct」の組み合わせはコスト面で注目を集め、2025年にはデータセンター案件が拡大しています。私はこの構図を「NVIDIAの高性能×AMDのコスパ」という二極化と捉えています。
エヌビディア vs インテルや、エヌビディア vs クアルコムの記事でも、同様の提携と競争の構造を詳しく分析しています。
株価・業績の比較(2025年10月4日時点)
投資家にとって最も気になるのは、やはり業績と株価です。以下は直近決算データを基にした比較表です。
会社 | 決算期 | 売上高 | データセンター売上 | 株価(USD) |
---|---|---|---|---|
NVIDIA | 2026年度Q2(2025/8/27) | $46.7B | $41.1B | 187.62 |
AMD | 2025年Q2(2025/8/5) | ― | $3.2B | 164.67 |
NVIDIAはAIサーバー需要が業績を牽引。データセンター部門だけで前年同期比+56%と圧倒的です。AMDも堅調ですが、規模の差は依然として大きいと言えます。
私は投資家目線で見ると、AMDの成長率よりもNVIDIAの“収益の質”に注目しています。ソフトやネットワークを含む構造的収益は景気変動に強く、長期的には割高でも評価されやすいでしょう。
NVIDIA株価分析2025やAIバブル特集でも、この構造的優位を解説しています。
強みと弱みの比較
項目 | NVIDIA | AMD |
---|---|---|
強み | CUDAを中心とした開発エコシステム。AIサーバーで圧倒的シェア。 | CPUとGPUの両建て戦略。コスト競争力と柔軟な設計。 |
弱み | 価格の高さと供給制約。規制リスク。 | ソフト支援の弱さ。エコシステムの狭さ。 |
今後の注力分野 | AI推論向けRubin世代GPU、ネットワーク統合。 | MI350系GPUとEPYC連携強化、サーバー拡販。 |
両社の競争軸は「性能 vs コスト」。短期的にはNVIDIAの技術優位が続くものの、AMDが価格面で攻勢を強めれば市場シェアが変わる可能性もあります。
私は今後、AIチップ市場が多様化する中で「NVIDIAがプレミアムブランド化し、AMDが汎用市場を取る」構図が濃厚と見ています。
今後の見通しと投資家が注目すべきポイント
2024〜2025年は、米中規制や供給制約が続く一方、AI需要は過熱気味です。NVIDIAは「Rubin」や「Vera Rubin」など次世代GPUを2026年に投入予定。AMDも「MI350」シリーズで性能向上を目指しています。
今後の焦点は、ソフトウェアとネットワークの一体化。NVIDIAは「AI工場」構想でデータセンターを包括的に提供しようとしています。AMDはCPU+GPU+FPGAの融合で差別化を模索中です。
投資家は短期の株価変動より、技術ロードマップと顧客基盤の拡大に注目すべきでしょう。私は、長期的にはNVIDIAが依然として優位に立つと考えますが、AMDの成長ポテンシャルも見逃せません。
関連:エヌビディア vs TSMC|製造依存と株価の真実 / エヌビディア vs アマゾン|クラウドAI競争の勝者は?
FAQ|よくある質問
なぜNVIDIAはAMDより株価が高いのですか?
理由はAIデータセンター市場での圧倒的シェアと高収益構造です。ソフトウェアやネットワークも含むビジネスモデルが投資家に評価されています。
AMDの成長余地はありますか?
あります。特にCPUとGPUを組み合わせたコスト効率の高い構成が、クラウドや企業の採用を増やしています。
AI規制が両社に与える影響は?
短期的には出荷制限で売上に影響しますが、長期的には新市場(インド・東南アジアなど)開拓の契機にもなります。
どちらの株を買うべきですか?
短期リターンならNVIDIA、長期成長ならAMDも一考の余地あり。投資目的によって選択が分かれます。
まとめ|GPU戦争の行方と投資判断
エヌビディアとAMDの戦いは、単なるGPU性能競争を超えた「AI産業の主導権争い」です。現時点ではNVIDIAがリードしていますが、AMDも急速に追随しています。
短期的にはNVIDIAの独走、しかし中長期ではAMDのシェア拡大も十分あり得ます。投資家としては、両社の決算と技術発表を継続的にチェックし、市場の転換点を見極めることが重要です。
私は今後3年で、AIチップ市場はさらに多様化し、NVIDIAが「高付加価値領域」、AMDが「普及領域」で共存する時代が来ると考えます。
出典:NVIDIA公式IR / 出典:AMD公式IR / 出典:Reuters