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NVIDIA vs IBM|AI研究とスーパーコンピュータの覇権争い

青と白を基調にした背景で、左に地球と回路、右にAIチップを描き、中央に「NVIDIA vs IBM in AI」と書かれた比較図。

AIの未来を握るのは、どちらの巨人か。
NVIDIAはGPUで、IBMは研究とAI基盤で世界を支える。
両社は過去に「Summit」などのスーパーコンピュータを共同開発し、今は異なる方向でAI革命を牽引している。
この記事では、AI研究とスーパーコンピュータ分野における両社の戦略と立ち位置を比較し、投資家視点からの注目点を解説する。

用語の意味と基本解説

NVIDIA(設立1993年、米カリフォルニア州)は、GPU(画像処理装置)を基盤にAI時代を切り開いてきた企業である。
主力はデータセンターGPU「H100」や次世代「Blackwell」シリーズであり、生成AIの中核を担う存在だ。
一方のIBM(設立1911年、米ニューヨーク州)は、世界有数の研究機関を持つ老舗IT企業。
クラウド、AI、メインフレーム「IBM Z」、そして企業向け生成AI基盤「watsonx」で再成長を目指している。
つまり、NVIDIAが「AIを動かすエンジン」を作るのに対し、IBMは「AIを企業が活用する基盤」を提供する立場だ。

出典:NVIDIA公式
出典:IBM Newsroom

エヌビディアとIBMの技術・製品ポジション

NVIDIAはGPU「H100」「GB200」「Blackwell(B200)」を軸に、AIモデルの学習・推論を高速化する技術を展開。
独自のソフトウェア「CUDA」や通信技術「NVLink」により、データセンター全体を「AIファクトリー」として最適化している。
一方IBMは、企業がAIを安全に導入するための基盤として「watsonx」を提供。
さらにAI専用プロセッサ「Telum」や「AIU(AI Unit)」を研究段階から実装し、メインフレームとの統合を進めている。
NVIDIAが「ハード+クラウド+開発者」、IBMが「基盤+セキュリティ+企業運用」という構図である。

出典:NVIDIA Developer Blog
出典:IBM Research

提携・協力・競争の関係史

NVIDIAとIBMの関係は複雑だ。
2018年、両社は「Summit」「Sierra」などスーパーコンピュータで協力し、TOP500で世界首位を獲得した。
しかし、2024年にSummitが退役して以降、NVIDIAは独自のGrace Hopper構成を採用し、欧州「JUPITER」「ALPS」など新世代HPCで主導権を握った。
一方、IBMはAnthropicと提携し、生成AI「Claude」を企業向けに提供。
協業の時代から「棲み分けの時代」へと関係が移行している。

出典:TOP500.org
出典:Investors

株価・業績の比較(投資家視点)

直近の決算では、NVIDIAのFY2026年第2四半期売上が466.7億ドル(前年比+56%)に達し、データセンターが成長を牽引。
IBMの2025年第2四半期売上は170億ドル(前年比+8%)で安定推移している。
時価総額はNVIDIAが約4.6兆ドル、IBMは約2,600億ドル。
NVIDIAは高成長を背景に高PERで評価され、IBMは配当と安定キャッシュフロー重視の投資家層に支えられている。

指標 NVIDIA IBM
直近売上 $46.7B(FY26 Q2) $17.0B(2025 Q2)
成長率 +56% YoY +8% YoY
時価総額 約4.6兆ドル 約0.26兆ドル
この表から、NVIDIAの成長速度とIBMの安定収益構造の違いが読み取れる。

出典:CompaniesMarketCap
出典:NVIDIA IR
出典:IBM IR

強みと弱みの比較

項目 NVIDIA IBM
技術面 GPU性能・AI最適化で圧倒的優位 企業AI基盤とセキュリティに強み
ビジネスモデル ハード+ソフトの垂直統合 クラウド+コンサルの安定収益
リスク要因 評価高騰・顧客集中・規制 成長鈍化・新興AI企業との競合
株式魅力 高成長・ボラティリティ高 高配当・安定志向
両社は「スピード重視のNVIDIA」と「信頼重視のIBM」という対照的な戦略をとっている。

今後の見通しと投資家が注目すべきポイント

今後の焦点は、AI研究とスーパーコンピュータ市場の覇権である。
NVIDIAは「AIファクトリー」構想を進め、チップ・ソフト・クラウドを統合した生態系を拡大。
対してIBMは企業のAI導入支援に特化し、watsonxを中心にコンサル事業を強化している。
どちらが「AI時代のインフラ」を制するかは、ハード主導かソフト主導かの戦いにかかっている。
私は、両社は「競争と共存」を続けると考える。
なぜなら、AIを動かすNVIDIAと、AIを運用するIBMの関係は、相互依存的だからだ。

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まとめ|AI時代の覇権は「動かす力」か「使う力」か

NVIDIAは、AIモデルを「動かす」側の圧倒的な性能を武器に成長を続けている。
IBMは、AIを「活用させる」側として企業の導入・運用を支援する立場を築く。
どちらもAI社会に欠かせない存在だが、投資視点では成長性と安定性のどちらを重視するかで選択が変わる。
私は、NVIDIAが短期の主導権を握る一方、IBMは企業AIの信頼基盤として長期で再評価されると考える。

出典:Bloomberg

FAQ

IBMは今後GPUを自社開発する予定はありますか?

現時点では、IBMはGPU自社生産を予定していません。AI専用チップ「Telum」や「AIU」に注力し、CPUやメインフレームとの統合で差別化を図っています。

なぜIBMはHPC市場から撤退したように見えるのですか?

IBMはHPCハードから手を引き、より収益性の高い企業向けAI運用に注力しているためです。これは経営資源を最適化する戦略的判断です。

NVIDIAとIBMの提携は今後あり得ますか?

十分にあり得ます。過去に共同開発の実績があるため、AI研究や企業向けAI基盤で再び協業する可能性は高いと見られます。

投資家はどちらの株を選ぶべきですか?

高成長を狙うならNVIDIA、安定配当を重視するならIBMです。リスク許容度によってポートフォリオを分散するのが現実的です。


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